Calamai



 削ぎそそぎ/なぎ撫でる/濡れた手を/ぬぐわせて/
 迷う頬/泳ぐ目を/灰色に/含ませて/
 くすみ溶く/薄絹の/暗がりが/色あせて/
 淡い白と/甘いガスの/せまい腕に/とじこめてみせて/
 波のようにひろがる指/ペン先をまたたきでつけかえて/弓のようなしなやかさが/あやふやに透けかけてもわかる/
 青く通すあやうさにも/丸くくしけずる髪のような/ここにいたくなるなにかが/足をゆるませてふりほどく/
 雲のバターに切り入れる/細く真新しい裁ちバサミの/指のマークに触れたとき/押し殺した膜がこすられる/ 
 低く高さを見失う/凛と匂いたつ美しさの/袖のようなまどろみさえ/曖昧に音だけでつつみこむ/
 変わりつつ/霞み咲く/まんなかの/軸でいて/
 折れそうな/静かさで/何もかも/震わせてみせて/
 そっとまぶたを手なずける/首もとを冷たさでしめつける/細く織りまぜたライムで/それとなく迷わせて教える/
 引いて陶器に近づける/アナログにたわませた線を/弱くきえていくかけらを/かきよせて肌でみつめてる/
 靴と声を踏み込ませる/アスファルトにぶどうがあふれる/もろくささやかなきざしが/口ににじみだしのみこまれる/
 せめてペグを錆びつかせる/やわらかさのそとみをとらえる/ぬるく蒸すようなあやめが/さざめいて胸にとろけだす